ついランキングやレビューが気になってしまう。
ご飯を食べにいく時に最初にするのはグルメサイトを開くようになったのは
いつの頃からだろう。
「気になるお店があるんだよね」
というセリフは今と昔ではニュアンスが今と昔ではだいぶ違う。
「この前、何処何処に行った時にさ、すごい良さそうな感じのお店があってさ、今度行ってみない?」というのが平成の時代。
今や「この前、何処何処に行った時にさ、良さげなお店見つけて、調べたらネットで話題になっててさ、写真とかいい感じなんだよ。今度行ってみない?ほら、こんな感じ(ネットのページを見せる)」
これが現在のやり取りだったりする。
どちらも間違いではない。自分も気になるお店はネットで調べるし、レビューも気になる。
なんなら自分の直感よりも見ず知らずの誰かの感想に頼っていることが多い。
その背景には「失敗したくないんや!」という心理。
確かに出来ることなら誰もが失敗したくないと思いながら生きている。
しかし、人生というのは自分のものである。
自分だけの価値観というのも大切ではないだろうか?
いや、価値観の前に「直感」を大切にしたい。
—————— 10代の頃 ————————-
高校生の僕はCDショップにいた。
喫茶店で飲んでしまえば消えてしまう飲み物にお金を使うより
アルバムを1枚買うことの方が重要だった。
心の中で「ただいまー」と自分の家でも無いのに呟き、我が物顔でCDラックを
チェックしていく。最新のリリースから売れているランキング。
はいはいはい、やはりこの曲売れて来たね、と心の中で気分は音楽評論家。
欲しいアルバムは沢山あったが、財布の中の住人は少なかった。
お金が無いのでワゴンセールのように売られている安く売られている古いアルバムをなんとなく手に取る。ほとんど知らないモノばかりだ。
どのアルバムジャケット もぼやけて古臭く見える。
その中の一枚を手に取る。「Vanilla Fudge」というバンド・・・
ヴァニラ・ファッジ?何だか甘そうな名前だな。ヴァニラ・アイスという白人ラッパーが
ヒットを飛ばしたからそれっぽいのかな〜と思いながらジャケットも気になり
何となく手にとってレジへ。
https://music.apple.com/jp/album/vanilla-fudge/78980146?l=en
今見てもオシャレなジャケット。
家に帰り、CDプレイヤーにセットするまでどんな音楽なのか想像するのが
最大の楽しみだった。僕のイメージはドゥーワップなR&Bサウンド。
アルバムジャケットからそんな印象だった。
果たしてヴァニラ・ファッジのアルバムは…サイケデリックだった。
ビートルズのカバーと分かるまでしばらく要した。
なんだこれは…?当時はネットもないのですぐに情報を調べることも出来ない。
周りにヴァニラ・ファッジを知っている友人もいない。
頑張って何回か聞いたがどうにも好きになれなかった。
—————–およそ10年後——————
「やっぱりさデッド・ケネディーズの時代の音楽シーンはさ~」
「イギリスならやっぱりウルトラヴォックスは欠かせないでしょ~」
少し音楽好きな少年がその後ラジオDJとなり、生活に音楽が溢れる毎日。
周りには自分よりも音楽の造形に深い人たちばかりで全くついていけない日々。
「どんな音楽を聞いて来たの?」とは「今日は天気いいね」と
同じくらい頻繁に聞かれる挨拶みたいなものだ。
「ニルヴァーナとかメタリカ…」と答えると「あー」という反応。
何が正しいのか分からない。
そんなある日、「60年代後半にいたバンドでさ、あれ、名前何だっけな、
ビートルズのカバーとかサイケデリックにやってて」と話すプロデューサーに
「ヴァニラ・ファッジ…」とふと口から漏れた。「そう!そうだ!ヴァニラ・ファッジ!」
「オチケン、よく知っているね~」と言われた時にあのワゴンセールの中の一枚が
思い浮かび、あの時の直感が報われた気がした。
そして、聞き直してみるとヴァニラ・ファッジの良さが少し分かった気がした。
人生において日々失敗はしたくない。
しかし、自分の中での大きな発見は、見知らぬ誰かの口コミよりも
己の直感を信じた時に起こりやすい。
と、グルメサイトの有料会員である僕が言ってもあまり説得力無いが、、、笑